「千葉市が目指す特区民泊の形とは」千葉市役所 秋庭氏・桜井氏・高本氏

 

6月27日、千葉市が特区民泊の導入に向けて動き出したというニュースが各メディアで取り上げられ注目を集めた。既に、特区民泊については東京都大田区や大阪府大阪市などで導入され、個人だけでなく企業が特区民泊に取り組む例も見られる。

今回、千葉市役所にご協力頂き、国家戦略特区推進課・観光プロモーション課・生活衛生課、それぞれの課長に取材をさせて頂いた。特区民泊を導入するに至った経緯や狙い、どういった利用者を想定しているのかなどについて話を伺った。

特区民泊を活用し、観光資源をプロモーション

特区民泊に取り組むに至った経緯や狙いについてお聞かせください。

国家戦略特区推進課 課長 秋庭慎輔氏

まずは千葉市として特区民泊に取り組む目的をお話しさせて頂ければと思います。千葉市について、みなさん都市部という印象をお持ちかもしれませんが、実際は我々が良く千葉市の魅力として表現している言葉が「そこそこ都会で、そこそこ田舎」です。千葉市全体で市街化調整区域が広く占めておりまして、なかでも若葉区・緑区は市街化されていない区域が非常に大きく、農や緑といった様々な資源を有しています。

我々としては、オリンピック・パラリンピックの時の宿泊施設不足については課題として認識しているのですが、それについては住宅宿泊事業法に基づく宿泊事業の活用も検討していく必要があると思っています。一方で、特区であるからこそできることは何だと考え、特区民泊を活用し、本市内陸部の「緑」・「里」・「農」をキーワードとした農業体験や観光資源を活用した戦略的なプロモーションを進められないかという考えに至りました。

加曽利貝塚が特別史跡に指定されることが決まり、イチゴ狩りなどの観光農園や大規模なアスレチック施設の設置を予定している泉自然公園、観光・体験・アクティビティを楽しむことができるスポットを豊富に有しています。

しかし、今までは遊んだその日に帰る、日帰りがほとんどでした。そこに特区民泊を活用することで、今までは「点」だったスポットをつなげて「面」にしていきたいと考えています。これまで宿泊施設が無かった内陸部に宿泊することで、特区民泊施設を起点に1つのスポットを楽しむだけではなく、複数の観光・体験・アクティビティを堪能してもらえれば良いなと思います。

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この取り組みはいつから始められたのですか?

昨年から検討は進めており、具体的に形になりだしたのは今年に入ってからです。最初は、この特区民泊を、どこで、何を目的に実施するのかという点について議論を重ね、その中で「グリーン」というキーワードが出てきました。千葉市のグリーンエリアの観光振興を推進する1つのツールとして特区民泊を活用できるという方向性が見えてから、一気に動き出したという感じで、体系化できたのは今年の4月頃です。

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ごはんの釜焚き、お蕎麦作り、ホタルなど魅力多数

千葉市特区民泊の利用者はどういった方を想定されているのですか?

観光プロモーション課 課長 桜井篤氏

利用者については、外国人だけではありませんし、日本人だけに限ったものとも考えておりません。我々の特区民泊においては、緑や農をキーワードにしていますので、そういうものに関心のある人たちが対象になると思っています。

実は、「千葉あそび」という千葉市ならではの四季折々の体験型観光プランを紹介する冊子を作成・配布しています。今出ている最新号で言いますと、14のプランが紹介されておりまして、、古民家で農家の方に教わって釜でご飯を炊いて食べよう、とか千葉ならではのお蕎麦を作る体験など、ユニークなコンテンツを掲載しています。これを1年に4回作成し、2年前から実施しているのでコンテンツはある程度たまってきています。旅行業界や観光業界では、観光スポットであるそれぞれの点を線につなげて、面にしていくというような言い方がされるかと思いますが、千葉市のグリーンエリアは正しく同じ状況だと思っています。

例えば、お隣の四街道市ですが、東京駅から一番近いホタルが見える町でして、駅から1200メートルしか離れていない所にホタルが見えるスポットがあります。ホタルは規則的で毎晩8時25分に光るようなのですが、ホタルを見て、良かったと感じた後にできればお酒の一杯でも飲んでその場で泊まるというのはすごく贅沢な体験なのではないかと思います。さらに、泊まる場所は囲炉裏があるような古民家だったりすると楽しいでしょうし、このグリーンエリアではこうした体験を提供していきたいなと考えています。

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説明会で特区民泊に興味を示す参加者

特区民泊に対する市民の方々の反響はどのようなものですか?

生活衛生課 課長 高本哲郎氏

実施予定地域の若葉区と緑区で住民説明会を開催しました。開催前は反対する方々もいらっしゃるのかなと想定していたのですが、実際にいらっしゃった方々は特区民泊に興味津々といった感じの方が多かったというのが印象的です。

− 県外に特区民泊やグリーンエリアの情報はどのように発信していくのですか?

すでに「千葉あそび」があるので、これをうまく活用していきたいなと思っています。他にも、千葉市は隣接する市原市や四街道市とも政策連携を進めているため、3市で連携して一緒に観光プロモーションを進めていければと思っています。宿泊予約サイトから「千葉あそび」のサイトへリンクをして頂くということも効果があるかもしれません。まだまだ分かりませんが、プロモーションには注力していきたいと考えています。

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2泊する理由・魅力作りと訴求がポイント

特区民泊が利用されるようになるために、他に必要だと思うことはありますか?

おそらく、23日というのは1つハードルになると感じています。千葉という距離感のところで、1泊ではなく2泊以上する魅力をどれだけ作ることができるかという点が重要だと思います。例えば、旅行ではなく、より生活の一部に入り込んだ「別荘地」「隠れ家」のようなコンセプトで打ち出すのは面白いのかなと思います。他にも、地域興しをテーマとした大学のゼミの研究材料として活用して頂くという考えもあると思います。

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千葉市の新しい価値創出を目指して

最後に、特区民泊の取り組みによる目標をお聞かせください。

数値的な目標については、あまり考えておりません。むしろ最初は小さく立ち上げて、いろいろな試行錯誤を重ねていきたいなと考えています。そして新しい価値を創り出し、それを市の価値や魅力につなげていくことを目標にしています。

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取材を通して

住宅宿泊事業法案が成立し、新法に対応した民泊が注目されるなかで発表された千葉市による特区民泊の取り組みがどのような狙いがあるのか、その意図を把握したいと思い、エキサイト民泊編集部から取材を申し込んだ。

オリンピック・パラリンピックで見込まれる宿泊施設不足は新法で対応し、それらの開催地から少し離れた若葉区・緑区における広大な「緑」・「里」・「農」の観光資源を活用した戦略的なプロモーションの取組みの1つのツールとして特区民泊に取り組む。これを聞いた時には特区民泊の特性を活かすことができる考えられた戦略であると感じた。

しかし、取材の中でも触れられているように、2泊する理由を作る必要がある点や、そもそも特区民泊の要件を満たし、かつ観光資源・コンテンツとの相性の良い物件をどのように獲得していくのかという点は今後対策を取らなければならないだろう。決して、簡単なものではないものの、非常に豊富な観光資源を持つ同市の取り組みが成功すれば、この事例をもとに全国でも民泊を取り入れる動きが出ると期待できる。これからの展開に注目したい。

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取材協力:
千葉市 総合政策局 総合政策部 国家戦略特区推進課 課長 秋庭慎輔氏
千葉市 経済農政局 経済部 観光プロモーション課 課長 桜井篤氏
千葉市 保健福祉局  健康部 生活衛生課 課長 高本哲郎氏