「コスパの良い旅館業許可の取り方と自治体ごとの特性」民泊実務集団TEAM Nanatsuba・冬木洋二朗氏

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大阪特区での2泊3日解禁、住宅事業法案での180日規制、旅館業許可を取得するプロの増加など、この半年で民泊を取り巻く環境の変化は著しく、「私は民泊を始めるべきなのか」「どんな進め方が私にあっているのか」など頭を悩ませる方も多いのではないだろうか。そうした悩みを少しでも解決すべく、民泊の専門家としてテレビにコメンテーターとして多数出演している、民泊実務集団TEAM NanatsuBa/代表 冬木洋二朗氏に話を聞いた。

民泊実務集団TEAM NanatsuBaは、合法的な民泊を始めるために必要な旅館業許可申請、建築物の用途変更、それに伴うデザイン、施工までワンストップでサポート。サポート範囲は民泊だけでなく、簡易宿所、旅館業、ホテル業などの旅館業へのコンバートにも対応が可能。チームは代表である行政書士の冬木氏を始め、一級建築士、税理士、マンション管理士など各分野に精通したプロで構成され、それぞれのノウハウ・知識・経験を活かし、適法な民泊運営をサポートする。

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適法の民泊は営業日数制限が重い

民泊を始めたいのですが、どういった方法があるのでしょうか?

冬木氏:
民泊には適法で進める方法が2つあります。まずは、「特区民泊」という方法があります。国家戦略特区だけ除外される制度があります。東京都大田区、一部の地域を除いた大阪府、大阪市、北九州市、この4つの自治体のみが特区民泊を行うことが可能です。始めるにあたっての初期費用は安く、ワンルームでも工事の必要がない場合もあります。ただし、大田区の場合は宿泊日数が限られてしまいます。67日は泊めないといけない。手続きは簡単で費用はかからないものの、売上の部分で足かせがついてしまいます。大阪では条例が改正され、23日に緩和されました。

2つ目、いま国会に提出されている「住宅宿泊事業法案」、いわゆる民泊新法です。工事が必要なく2DKなどのお部屋でもできるようになります。しかし、年間営業日数が180日に絞られ、かつ自治体によってその日数をもっと絞ることができるようになりますので、宿泊事業を思う存分できないというデメリットがあります。

民泊ではありませんが、ホテル・旅館・簡易宿所など、旅館業の営業許可をとってしまえば、営業日数の制限はかかりませんので、宿泊事業を思う存分できます。しかし、フロントの設置、トイレの増設が必要になります。トイレは基本的に最低でも2つは必要になります。賃貸であれば、オーナーさんの許可を得ないといけないですし、フロントにスタッフを置かなければならないという運用コストの面が大きなハードルになります。

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旅館業なら「100㎡未満、2階建の戸建て」がコスト低い

どの民泊方法が良いのか、何を選ぶべきでしょうか?

冬木氏:
どの方法を選ぶかは、どれだけ費用をかけられるか、どこを重視するかだと思います。

大田区であれば、特区民泊で運営するのが一番初期のコストを安く抑えられます。民泊新法まで待てるのであれば、新法でやるのもコストを安く抑えられますね。旅館業の場合ですと、旅館業運営部分が100㎡を超える場合は建築基準法の確認申請が必要になりますので、その申請費用が発生します。100㎡未満だから何をやっても良いというわけではないので注意が必要ですね。申請が不要というだけで、基準を満たしていなければいけないので、基準を満たすための工事等は必須になります。100㎡を超えると、申請費用、物件の初期契約などを入れれば200万円、300万円以上はかかるでしょうね。施工内容・範囲、建物・部屋の状態によってコストはどんどん増えていくので、一概にいくらというのは難しいです。

旅館業の営業許可を取るという話であれば、大規模なものではなく、100㎡以下の物件でフロント設置、トイレ増設だけで済む物件が、一番コストを押さえられるかと思います。その場合は、5部屋はキープできないでしょうから、旅館やホテルではなく簡易宿所になりますね。ただし、マンションになってしまうと管理規約で宿泊事業が制限されている場合がありますので、戸建ての物件が良いでしょうね。あとは、特殊建築物になるので、3階以上の建物は原則として耐火建築にしないといけないんですね。耐火建築を考えて、2階建の戸建てでやるのが現実的かと思います。防火地域になっている地域であればそもそも耐火になっているので大丈夫です。

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所有者NG、窓不足、検査済み証なし、旅館業許可のハードル

旅館業の営業許可が取れない要因はなんですか?

冬木氏:
土地には都市計画でその土地の用途が定められているのですが、それがホテル・旅館の運営ができない地域であれば、そこでの営業は絶対にできないので、まずは運営ができる用途地域であるかを確認します。

賃貸の場合は、物件オーナーが貸さないというケースが多いですね。話が進んでいっても最終的に宿泊事業者に貸し出すのを嫌がることが多いんです。

次は、窓ですね。必要な窓面積が定められていまして、トイレは無ければ作れば良いのですが、窓じゃないところを窓にするのは建物の構造上難しい場合が非常に多い。あるケースでは、数フロアで営業許可を取ろうとしていたのですが、窓が足りないフロアがあり、そのフロアでは許可が取れないことが分かりました。フロア数が減ったことで収支が合わなくなり、その案件はそこでクローズしてしまいましたね。

あとは、避難ですね。二方向避難ができるようにしないといけない。

検査済み証がない場合も難しいですね。保有物件ではなく、賃貸で始めようとして検討している物件の検査済み証がない場合は、その建物が当初申請した通りに建っているかが分からないので、一から調べ直さないといけない。当然、調査するには費用がかかるので、保有物件ではない検査済み証がない物件は取り掛かることは難しいですね。

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渋谷はラブホ条例、江東区・台東区は近隣への説明会義務

旅館業の許可取得は場所によって難しさは変わるのですか?

冬木氏:
自治体によって旅館業の許可を取る難しさは違いますね。自治体はそれぞれに地域特性があるため、旅館業の申請数が変わってきます。申請数が多い自治体は、旅館業について経験があったり、詳しい方がいらっしゃって、柔軟に対応していただけるケースがあります。

渋谷はラブホテル建築規制条例という他自治体にはない(東京都では渋谷区のみ)ルールが設けられ、これによって非常に許可取得が困難です。渋谷ではラブホを新しく作らせないために、ラブホテル建築条例に基づいて、「ラブホテルじゃないこと」を申請しなければならない。そのための要件がすごく厳しいんです。宿泊人数に応じたロビーを用意しなければならないですし、食堂も必要になります。その要件をクリアできないので、それなりの資本がないと手を出せないのです。いまラブホであるものをコンバートする場合は大丈夫ですが、新しくワンフロアで旅館業を取ろうと思うとラブホ条例が大きなネックになります。

ラブホ条例にひっかからずに渋谷で許可取得を得る方法として、カプセルホテルという手段があります。これであれば、ラブホ条例にひっかかりません。ただし、既製品やそれに準ずるカプセルタイプのベッドを置かなければなりません。しかもカプセルベッドはシングルタイプのものでなければなりません。

江東区、台東区は近隣への説明会を実施しないといけないですね。

墨田区は文教地区がないので、非常にやりやすいと思います。物件があれば、港区も良いと思いますが、最近は物件を探すのが非常に難しくなってますね。

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最後に

旅館業の営業許可を取る、この行為には何重ものハードルが待ち構えている。都市計画で定められた営業可能な地域にあり、窓面積・トイレの数・避難経路が確保され、容積率を加味して設定した運営部分で十分な収益見込みを立てることができる。これらの条件を満たす既存物件はほぼ皆無に近く、多額の工事費用が必要となる。土地を購入し、新たに建築する場合は、ファイナンスが必要となり、それがもう1つの関門になる。そして、不動産投資家・ファンドはホテルアセットを有力なポートフォリオとして認識が広まり、良い土地は大資本へと流れ、個人レベルで見つけることが非常に困難な状況である。

しかし、こうしたいくつものハードルを超え、冬木氏は都内で旅館業許可取得の実績を多数保有している。許可取得の可否については、実際に調べてみないとわからない。少しでも許可取得について興味がある方はぜひ一度、冬木氏に相談してみてはいかがだろうか。

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